『 超図説「21世紀の哲学」がわかる本 』

遠い昔の哲学者に思いを馳せると同時に、現在の哲学はどうなっているのだろうとふと思い、『超図解「21世紀の哲学」がわかる本』を手にとってみました。

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要点を簡潔に書かれていたので、哲学の知識があまりなくてもさらさらと読める、初心者向けの入門書的な存在。

哲学の歴史を解説する本では、あまり記載されていることが少ない現代の状況。古代ギリシャデカルトから始まる大哲学の語られてきた近代、そして現代と、大まかな歴史の流れを把握することが、そして、現在注目を集めている哲学者や思考法、本などの知識を得ることができました。

 

初心者にもわかりやすく表現してあるのでさらっと読める一方、この本1冊では十分に理解したことにはならないのだろう。入口に立っている状態かな。

この本の中でおすすめされていた本を読んだり、哲学者について調べたりなどして、さらに深めていきたいと思います。

 

とりあえず、興味のある、心の哲学の入門書、ジョン・R・サールの「心、脳、科学」を読み始めました。

『 無脊椎水族館 』

疲れている時、エネルギーがありあまっているわけではない時、でも、ゆる~く楽しい気持ちになりたい時、そんな時に私は、宮田珠己さんの本を開く。

 

今回手に取ったのは、『無脊椎水族館』。

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深い海の底を感じさせる暗い水族館内で、普段ふれることのないふしぎな生き物たちを見て癒される。日本各地の水族館をめぐった記録。

 

宮田さんがおすすめしているのは、明るく華やかなイメージの水族館ではない。イルカやアシカやラッコではない。深海を思わせる暗いエリア、無脊椎動物たちの姿だ

カニやエビやイカや貝や、クラゲやイソギンチャクやウミウシなど、あまりスポットライトをあびてはいない生き物たち。陸上で生きているとふれあうことのない、ふしぎなそして魅力的な生き物たちの姿を温かく見つめる宮田さんのまなざし。

 

ああ、水族館に行きたい。海が足りないなぁ。

 

私は生き物が好きで、学生時代には植物、中でも樹木について学んでいたのだが、その一方でおそろしいくらいに動物についての知識がない。

そういえばサンゴってどんな生き物だっけ?クラゲは??ウミウシは???と、登場した生き物たちのことについて、知らないことが多すぎる。動物の分類は、うっすらと高校の生物で習った記憶があるけれど、内容はもう忘却の彼方へ。

海の生き物の分類を大まかに把握しなおしたいと思う。

『 16歳のデモクラシー & 光の子と闇の子 』

いつか時間ができたらやりたいと思っていたことの一つが、よく分かっていないことを自分なりに調べること。

実は私は30年以上生きていながらも、分かっていなかったり、知らないことがたくさんある。学校生活の中で、全く興味が持てずにほとんど聞いていなかったり、誰もがいつしか身につけてしまっていて、今さら恥ずかしくて聞けなったりしていることが、わりとたくさんあるのだ。

社会人になってから特に、社会の仕組み、物事の捉え方、そして、それらを理解するための歴史を知っておく必要があるのだと、日々思いながらも、なかなか時間をかけてそれを学びなおすことができずに、これまでの時間が過ぎて行ってしまった。

ということで、時間のある今、自分なりに学びなおしプロジェクトを始めようと思う。

 

今回手に取った本は、佐藤優さんの『16歳のデモクラシー』。

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この本は、佐藤優さんが、埼玉県立川口北高校で行った集中講義をまとめたもの。この講義の中では、ラインホールド・ニーバーの『光の子と闇の子 デモクラシーの批判と擁護』を、高校生たちと対話しながら読み進めていく。

著者ニーバーはアメリカの神学者政治学者。20世紀の思想史に、そして歴代のアメリカ大統領にも影響を与え、『光の子と闇の子』はデモクラシー論の古典と言われており、現在の社会に大きな影響を与えているアメリカ外交の発想を理解するのに適している本とのこと。

 

『光の子と闇の子』を今の自分一人で読んでも、きっと分からない部分が多いはずですが、この本と併せて読むことで、とても分かりやすく先導してもらいました。

現在の足元には昔から流れてきている歴史があり、その上で発展してきた思想をとても分かりやすく説明してくださっているので、歴史や英語を学ぶ意味を痛感しました。

特に、一般的な日本人が理解しにくいキリスト教の感覚など、佐藤優さんだからこそ伝えられる分野を、とても分かりやすく、そして、もっと理解できたらいいなと思えるような伝え方をされているので、興味を持って本のページをめくりました。

今からでも、少しずつ教養を身につけたいと思います。

『 存在感のある人 』

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図書館の中でも、海外文学の棚を眺める時間が好きだ。遠く見知らぬ国で生まれた物語が、なんらかしらの紆余曲折を経て、遠く離れた島国の片隅の図書館に並んでいると思うと、不思議な感覚に陥る。世界には、実にたくさんの物語が存在して、到底読みきることはできないのだなぁと思う一方、一つでも多くのすてきな物語に出会いたいと、手を伸ばす。

 

タイトル含む背表紙から漂う存在感に惹かれて読んだ『存在感のある人』は、6つの短中編小説集。ブルドッグ、パフォーマンス、ビーバー、裸の原稿、テルビン油蒸留所、存在感のある人。

 

どの話も、読み始めると、すっとその世界を眺めることができる。描かれるべき場面がしっかりと描写されていて、文章が心地良い。あとがきには、「もう33年前だなんて!」との引用があったけれど、どの物語も全く古さなどなく、それぞれの世界に自然に誘ってくれる。きっと、元の文章もちろんだが、日本語訳もすばらしいのだろう。

 

6篇の中では、「裸の原稿」と「テレビン油蒸留所」が印象に残る。

人肌を前に、沸きあがってくる感覚をペンで書きつけていくという不思議な「裸の原稿」。肌に文章を書いていくってどんな感覚なんだろう。どのくらいの長さの文章ができたのだろう。

「テレビン油蒸留所」は、カリブに浮かぶハイチの雰囲気と普通とはまた一味違っているであろう人生の流れが魅力的。この中篇からもっと大きな物語へと繋がっていくような感じがした。

 

アーサー・ミラーは名前を知っているような?くらいの認識だったけれど、これを機会に他の本も読んでみたい。劇作家、代表作は「セールスマンの死」「るつぼ」など。

『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』

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アジア、中東・ヨーロッパ、南アメリカ、アフリカと、世界中のいろいろな辺境を探検してきた高野さんが綴るグルメエッセイ。

 

食事中には読まないようにとの注意書きがあったけれど、この本を読み始めたのはミスドにてドーナツとコーヒーを傍らに置きながらでした。辺境の地での高野さんの状況とのギャップが大きすぎて、私の食欲なんて全く気になることなく、本の中の世界に浸らせてもらいました。

 

この本を読みながら、まず改めて感じたのは、高野さんの食事に対する姿勢がすごいということ。

高野さんは、出された食べ物は、「げっ」と思いながらも、絶対に食べるという信念を貫いている。これがまず、すごいことだと思う。いろいろな土地に行ったときに、その土地になじむためには、との土地の人と同じものを食べるということが大切と書かれているけれど、それにしてもその徹底ぶりがすごい。調理前の虫を出されて、「げっ」と思いながら食べて、地元の人々に驚かれたり、最初は「げっ」と思っていたけれど、食べていると次第に慣れてきたり。とにかく、すごい!の一言に尽きてしまう。

 

続いて、珍しい食べ物だけではなく、その背景にある物語がおもしろいということ。

そもそも、どうしてそんな食べ物の存在を知っているのか、なぜその食べ物がある場所に行ったのか、そこで何をしていたのかなどなど、それがまた気になってしまう。気になる食材を囲んで、パーティを開催されているのも何とも楽しそう。

中でも、旧ユーゴスララビア・コソボ共和国出身のアルバニア人の友人が話す故郷の食べ物が気になって、わざわざ訪ねて行って作ってもらったという話が良かった。また、口噛み酒を造ってもらう話も、ハードな肉体労働だということがとてもリアルで印象的。

 

以前、栄養学のワークショップに参加した際に、「栄養は食べ物に含まれるものだけではない。食事を摂る環境、自分の状態や生育環境など、ありとあらゆることが関わっているもの。」と聞いたことを思い出す。どこで誰と何を食べるのか。高野さんのようななかなかできない体験が栄養となって、こういう本を生み出しているんだなぁ。

 

高野さんの本との出会いは数年前。わらづと納豆づくりに興味を持っていた頃、「謎のアジア納豆」を手にした時だった。「何この本、おもしろい!この人は一体何者?!」と、それから夢中になっている。

 

『 黒い時計の旅 』  

 

本を読んで、おもしろいなぁと思うことは多いけれど、物語の流れに引き込まれ、ページをめくる手が止まらなくなる本に出会えることは、そう多くはない。「黒い時計の旅」はまさしくそんな本だった。

 

ヒトラーのためにポルノグラフィーを書く作家バニングが、第二次世界大戦にドイツが勝利し戦争が続いているもう一つの世界と現実の世界という、二つの平行する世界を行き来する物語。と、こんな大まかなあらすじでは全くこの本の魅力は伝えられない。

 

もちろん、この設定もとても興味深いのだけれど、何より、エリクソンの作り出した二つの世界は、どちらも見たことのない世界のはずなのに、映画のシーンのように想像することができる。作り込まれた世界に入り込んで、物語の流れに引き込まれ、抜け出せなくなる感覚。

 

そして、次々と繋がりながら登場する人々もミステリアスで魅力的だ。彼らは実に様々なものを生まれながらに背負っている。出生が途中で明らかになるバニング、男に死を与える踊りを踊るデーニア、その息子マーク、などなど。人はなぜ、こんなにも様々なものを背負い、生きていくことになるのだろう。それが、人生の面白いところなのだろうけど。

 

さらに、彼らの人生は、歴史の大きな流れの中を流されていく。特に、戦争に巻き込まれていくことは、戦争経験のない私からすると何か大きな意味を持つことのように感じる。ただそれは、現在も同じことなのかもしれない。逆らえない、把握もできない、大きな流れに流されながら、その中で生きていくしかないなのだなぁと改めて考える。

 

この物語の最後の場面は、広がる静寂の中に、一筋の諦観が漂う。そんな人生を一つでも多く知りたくて物語を読み続けているのかもしれない。

 

『黒い時計の旅』 スティーブ・エリクソン 訳:柴田元幸  

『 ヒルは木から落ちてこない。 ぼくらのヤマビル研究記 』

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ヒルは木から落ちてこない。」というタイトルを見て、「そうなの?」と思わずこの本を手に取った。

この本には、学校の先生をされていた樋口先生が主催される「子どもヤマビル研究会」の子どもたちが、謎に包まれているヒルの生態を調べる様子がつづられている。

木から落ちてくるのか、シカが広げているのかなどなど、ヒルについての通説を確かめたり、まだ明らかになっていないヒルの卵の様子を観察したり。

ヒルは人間と関わりがある生き物だけれど、まだまだ謎に包まれている部分が多いということを知って、面白いなぁと思う。

 

幸か不幸か、私はこれまでの人生で、あまりヒルと関わる機会がなかった。

山登りに行くと、ヒル注意という言葉を聞くが、そこまで山登り歴が深くなかったり、行動山域にヒルが少ないということもあり、まだあまり出会ったことはない。

一番身近だったのは、以前、兵庫県の中央部の谷あいの集落にいた頃。

山の中や畑などを歩いていると、気がつくと体にヒルがくっついていることがあった。

シカが多い地域だったので「シカがヒルを連れて来る」とか、「ヒルは木の上にひそんでいて、人間の呼吸で出る二酸化炭素を察知して木の上から落ちて来る」と教えてもらった。

が、その現場を見たことはなく、子どもたちが調べる様子を読んで、なるほどと納得。

 

体にくっついてきたヒルはもちろん血を吸っているわけだが、ヒルに血を吸われたからといって、蚊のようにかゆくなったり、アブやハチに刺された時のように痛くなったり、最悪命の危険を感じるということはない。

ヒルは血を吸う時に、血が固まらないようにする物質(ヒルジン)を出すので、そのせいで、血がしばらく止まらずに洋服が血に染まることぐらいがいやだと思う程度だった。

しかし、血を吸った後に必ず卵を産むというわけではなさそうだったり、そもそも普段はどこにいるのかなど、ヒルが一体どのような生き物なのか、まだよくわからない生き物なんだということがよく分かった。

 

この本を読んで、ヒルをいう生き物に対する興味と同じくらい、強く思ったことは、子どもの頃に、このような体験をできることは、貴重な体験だろうなということ。

私は、学校という教育現場とは異なる環境で、自分の持つ興味を追求する体験に興味を持っている。

自分が生きている中でも、子どもの頃に、好きなことを思いっきり追求できるということは、とても大切な気がしているからだ。

そして、自分たちで考えて、調べて、結果を発表するという一連の流れを体験したり、仲間や先生といっしょに過ごしたりしたことは、大切な資産になっていくはず。

 

ヤマビル研究会のことは、この本で知ったので、現在進行形での活動もチェックしながら、今後の活躍を楽しみにしています。

 


ヒルは木から落ちてこない。 ぼくらのヤマビル研究記』 

樋口大良+子どもヤマビル研究会 山と渓谷社 2021年