海辺で本を読む

朝起きて、天気が良い。
今読んでいる本を海辺で読んだら気持ちいいだろうなとふと思い、海へと向かった。
車で1時間ほどで、海に着く。たまに海を眺めに来くるお気に入りの場所。

海辺で読んだ本は『愛しのオクトパス 海の賢者が誘う意識と生命の神秘の世界』

この本は、作者のサイ・モンゴメリーさんが、主にアメリカのニューイングランド水族館のタコたちとの交流する様子が描かれているノンフィクション作品。
タコという生き物がいかに賢く、いかに好奇心旺盛で、そして個性的かということがとても楽しく伝わってくる。
以前に読んだ、宮田珠己さんの「無脊椎水族館」で紹介されていて、興味を持って今回手にとった。

タコは、軟体動物の頭足類という生き物の仲間で、脊柱を持つ人間とは全く異なる進化を遂げてきた生き物の一つ。
無脊椎動物の中でも神経がとても発達していて、腕それぞれが思考をしていたり、腕の吸盤で味覚を認識したりすると考えられているそう。
器用で、記憶力もあって、水族館の水槽の中でタコを退屈させないことが難しいとの記述もあった。
この本の中では、水槽の水の中に腕を入れて、タコにさわってもらう時間を楽しむ姿が描かれているが、全然違う環境で生きている生き物とふれあうことができることはとてもおもしろそうだ。

そして、さらに印象的だったのは孤独な生き物だということ。
自分の縄張りの中で一人で過ごし、他の個体と出会う時間はほとんどない。
生殖も人間とはずいぶん違うし、メスのタコは卵を産んだら、卵のお世話をして、そして一生を終える。
同じ種の群れの中で生きている人間とは、全く異なる生き方は一体どんな感覚なのか不思議だなと思う。

水族館で過ごしているタコだけでなく、野生のタコに会うために、作者はスキューバダイビングの練習をして、メキシコの海へと出かけて行ったりして、とてもバイタリティにあふれている。
私は子どもの頃特に、海の中の世界に憧れていたので、スキューバダイビングをしたかったことを思い出した。

以前一度だけ、磯でタコを見つけて、捕まえたことがある。
野生のタコを見つけた興奮で、反射的に両手で持ち上げたら、8本の足で私の腕へと登ってきた。
その感触に驚いて、必死ではがして、海へと投げ入れてしまった。
一瞬だけふれあったあのタコは、その後どんな人生を送ったのだろう。

海の中に住んでいるタコたちが、今日も楽しく過ごしていることを願う。