『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』

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アジア、中東・ヨーロッパ、南アメリカ、アフリカと、世界中のいろいろな辺境を探検してきた高野さんが綴るグルメエッセイ。

 

食事中には読まないようにとの注意書きがあったけれど、この本を読み始めたのはミスドにてドーナツとコーヒーを傍らに置きながらでした。辺境の地での高野さんの状況とのギャップが大きすぎて、私の食欲なんて全く気になることなく、本の中の世界に浸らせてもらいました。

 

この本を読みながら、まず改めて感じたのは、高野さんの食事に対する姿勢がすごいということ。

高野さんは、出された食べ物は、「げっ」と思いながらも、絶対に食べるという信念を貫いている。これがまず、すごいことだと思う。いろいろな土地に行ったときに、その土地になじむためには、との土地の人と同じものを食べるということが大切と書かれているけれど、それにしてもその徹底ぶりがすごい。調理前の虫を出されて、「げっ」と思いながら食べて、地元の人々に驚かれたり、最初は「げっ」と思っていたけれど、食べていると次第に慣れてきたり。とにかく、すごい!の一言に尽きてしまう。

 

続いて、珍しい食べ物だけではなく、その背景にある物語がおもしろいということ。

そもそも、どうしてそんな食べ物の存在を知っているのか、なぜその食べ物がある場所に行ったのか、そこで何をしていたのかなどなど、それがまた気になってしまう。気になる食材を囲んで、パーティを開催されているのも何とも楽しそう。

中でも、旧ユーゴスララビア・コソボ共和国出身のアルバニア人の友人が話す故郷の食べ物が気になって、わざわざ訪ねて行って作ってもらったという話が良かった。また、口噛み酒を造ってもらう話も、ハードな肉体労働だということがとてもリアルで印象的。

 

以前、栄養学のワークショップに参加した際に、「栄養は食べ物に含まれるものだけではない。食事を摂る環境、自分の状態や生育環境など、ありとあらゆることが関わっているもの。」と聞いたことを思い出す。どこで誰と何を食べるのか。高野さんのようななかなかできない体験が栄養となって、こういう本を生み出しているんだなぁ。

 

高野さんの本との出会いは数年前。わらづと納豆づくりに興味を持っていた頃、「謎のアジア納豆」を手にした時だった。「何この本、おもしろい!この人は一体何者?!」と、それから夢中になっている。