『 <正義>の生物学 』


「トキやパンダを絶滅から守るべきか。またそれはなぜか。」

 

大学の先生である作者の山田俊弘さんが、生物学の講義の中で学生さんたちに問いかける。そして、この問いに対しての答えを例に、様々な角度から生き物の保全について考えを進めていく。地球上の生物の進化の歴史などのいろいろなデータを基に、現状をわかりやすく説明。最終的な山田先生の答えは、生物を守ることは倫理的に正しいことだから。

 

この本は、生態系保全を学ぶためにおすすめと紹介されていたので、手に取ってみた。生物のとりまく現代の考え方を網羅できるような構成になっていて、分かりやすくおもしろかった。

 

私が大学生活を過ごした農学部では、基本的に「自然は、人間が持続的に利用するために管理すべし」という立場に立っていた。この立場については、理解はしてはいるけれど、どこか納得しきれずにいた。それがなぜなのかを知りたいと思っていた時に、環境倫理学というものを知って、これを理解できれば、広い視野を持って生きていくことができるのではないかと思ったものだ。

 

生態系保全を考える際に倫理学的視点に立つ場合も様々な立場があると思うが、この本で紹介されている「エドワード・ウィルソンの正義」は特に興味深そうだ。人間非中心主義の中でも、生命中心主義では、なぜ動物のみへの配慮にとどまっているのかを知りたい。シンガーやウィルソンの本を読んでみたくなった。